EndPaper

本に触れる。
その小さなきっかけを届ける
ウェブマガジン。

2018-11-01

誰かのために本を届けること。と、一番大切な人に本を届けること。



はじめまして。

バリューブックスでBOOKGIFT Project.を担当している、中村聖徳です。

上田市内で音楽関係の仕事もしながら、バリューブックスで働いています。
去年からは「Books&Cafe NABO」や「BOOKBUS」、そして「BOOKGIFT Project.」の活動に携わっています。
今回は、皆さんに僕らが行っている「BOOKGIFT Project.」について少し知っていただきたいと思い、この文章を書いています。
そして何より、この活動は今バリューブックスで働くみんなに知ってもらいたいと感じています。


BOOKGIFT Project.とは

株式会社バリューブックスが2010年から行っている、本の寄贈プロジェクトです。

バリューブックスは長野県上田市の3倉庫を主な拠点とし、
古本の買取・販売を行っています。
毎日2万冊の書籍が日本全国から送られてきます。

しかし、その中には値段がつかない本も多いのが現状です。
再び流通に回すことのできない本は、実は半分近くになり、最終的に古紙回収に回ってしまいます。

とは言っても、ジャンルは絵本や児童書、料理本から文芸書など様々。
状態も決して古いものばかりではありません。
他には、かつてベルトセラーになった本が、古本市場では飽和状態となり、買い取れなくなるものも多いのです。
本自体のおもしろさとは別の理由で、古紙回収に回る本もたくさんあります。
「古紙リサイクルになってしまう書籍を、少しでも多く本の形のまま生かすことができればいいのに。」
そんな想いから、「BOOKGIFT Project.」は始まりました。

また、そうした想いに加えて、
「会社のスタッフが働く中で、社会とのつながりを感じ、
そして家族・身の回りの人に自分の仕事を誇れるようになったらいいな。」
という気持ちがありました。

そう想ったきっかけは、まだ会社の設立初期、スタッフの1人が会社を去っていくときに残した言葉でした。
それは「働いていて、社会とのつながりを感じられなかった。」
この言葉を聞いて、バリューブックスは社会とどんなつながりを持てるのだろうか?
こんなことを考えるようになりました。

本たちを、古紙リサイクルではなく、なるべく本のまま活用したい。
そして、会社とそこで働くスタッフのみんなが、社会とのつながりを持てるようにしたい。
その想いから「BOOKGIFT Project.」を始めました。

プロジェクトを始めた当初は、会社のあった上田の老人ホームや児童施設に声をかけていきました。
快く受け入れてくれるところもあれば、怪しまれてか断られることもちらほら……。
(タダで本がもらえるなんて、なんか怪しい気もしますね……。笑)

会社の近所の施設や、街の思い浮かぶ場所に連絡をし、本を置いてもらう。最初はそんな風にして活動をしていきました。

そして月日が流れ、会社の主軸である古本買取の事業が成長していきました。並行して、「BOOKGIFT Project.」の担当も変わっていきました。そうした変化の中で、こちらからお声がけした場所のなかには疎遠になってしまうところもあり、本の追加や入れ替えも行われない、といったことも起きるようになってしまいました。

気づけばプロジェクト開始から7年が過ぎ、会社は10年の節目を迎えていました。創業時には6名だったスタッフの数は、約400名を超え、倉庫も4拠点になっていました。そこで改めて、この「BOOKGIFT Project.」を考え直そうと話し合いました。
最初に思い描いていた理想のビジョンとのずれ、いつの間にか事業の片隅に追いやられてしまったのはなぜだろう?

自分が担当になったのを機に、過去の担当者や、たくさんのスタッフに話を聞きました。そのなかでわかったのは、「だれもBOOKGIFT Project.が必要ないとは思っていない」ということ。むしろ「どんどんやったらいいじゃん!」という意見ばかりでした。
これには正直驚きました。
でも、「やったほうがいい」と「自分がやりたい」という気持ちは別です。

では、どうやって実現させればいいのだろう。悩む中ある考えに思い至りました。

「自分たちが置きたいところに、置けばいいんじゃないか?そうやってみんなの自分事にしちゃえばいいんだ!」

でも、本を置きたいところってどこ?それに、どうやってやろう・・・。

そんなとき、きっかけをくれたスタッフがいました。

以前、倉庫で一緒に働いていたスタッフが、
「自分の子供の通う保育園にBOOKGIFTしたいです。できますか?」
と言ってくれました。
「もちろんです!!やりましょう!!」
そこからは、自身も初めてのブックギフトで不安もありながら、何かその先に光を感じ、スタッフと一緒に話を詰めていきました。
保育園の先生からもふたつ返事で「ぜひ!」とお言葉をいただき、われわれも意気揚々と準備に取り掛かりました。
(やはりつながりのある人がいると、安心できるのかな。)

以前であれば、本は直接お届けするか、郵送するかのどちらかでした。
ただ今回は、この年の7月新たにバリューブックスに仲間入りした「BOOKBUS」に絵本をのせて直接読みたい本を選んでもらうことにしました。好きな本・興味のある本を選ぶ。その行為自体もとても魅力的だと考えていたからです。

そして当日、約束の時間にBOOKBUSで保育園にお邪魔しました。


そして、保育園の先生方に交代で来てもらい、園に置きたい本を選んでもらいました。
(子供たちはお昼寝中Zzz。)

すると、車内からは「あーこの本!」「こんなのもあるよー!」「図鑑もある!」と先生方の楽しそうな声が!
先生方はそれぞれのクラスの子供たちが好きそうな本を腕いっぱいに抱えながら、本を選んでいました。

この光景を見て、なんとなく思い描いていたあたらしいBOOKGIFTの形が見えてきました。

会社には400人ものスタッフがいる、そしてみんなにはそれぞれ家族や友人、様々なつながりがある。
まず会社のみんなが本を届けたい場所と、バリューブックスを繋いでもらい、一緒に本を届けに行く!!
身近なところからこの輪を広げていけばいいんじゃないだろうか。

誰かが誰かに「本を届けたい!」という気持ちを、応援できるようなプロジェクトにする。
そして、その先にいる人の本に触れる時間が増えて、暮らしが少しでも豊かになってくれたらいいな。
そう思いました。



バリューブックスという会社は、日々変化しています。
もしかしたら、1年後には違う形になっているかもしれないし、
その先のことはまだわからないけど、
バリューブックスのみんながBOOKGIFTのことを忘れない限り、
続いていくプロジェクトである、と思っています。

保育園へのBOOKGIFTの帰り際、こんな素敵な光景に遭遇しました。
選んでもらった本を、早速子どもたちが読んでくれていました。

これから「BOOKGIFT Project.」の活動を、この「End Paper」で報告していこうと思います。

是非、そちらもご覧ください。

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・活動レポート:Facebookも更新中。こちらを→ Click! 

・BOOKBUSで東北は岩手県の施設にBOOKGIFTしに行きました。
その様子がドキュメンタリームービーになってます。ご覧ください。こちらを→ Click!! 

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posted by 中村 聖徳

上田市で音楽関係の仕事をしながら、バリューブックスで働く。
バリューブックスに入ったきっかけも、音楽仲間を通して。
最近好きな本は、おさるのジョージシリーズ、ヨシタケシンスケさんの「もう、ぬげない。」(甥っ子の影響)

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