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2019-12-13

500人のボランティアをマネジメントする <後編:事務局編>

 

サポーターとも呼ばれる約500人のボランティアを擁するNPO、ブリッジフォースマイル(以下、B4S)。

その実態を知るべく、前回の記事ではボランティアとしてサポーターを務めるあくちゃんとばーばらに話を聞きました。

 

500人のボランティアをマネジメントする <前編:ボランティア編>

 

今回は、運営元である事務局ではたらく菅原さんへのインタビューです。

どうやら、様々な試行錯誤を経ながら生まれた仕組みが大所帯のB4Sを支えているようです。

 

 

子どもの数だけ、サポーターが必要

 

━━ 菅原さん、今日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

 

 

━━ 先日は、サポーターのあくちゃんとばーばらにインタビューさせてもらいました。おふたりがB4Sに参加した経緯などもお聞きしたんですが、菅原さんはどうしてB4Sに?

B4Sの代表の林と私は、もともとある会社の上司と部下の関係だったんです。

━━ そうだったんですか。

私が結婚と出産を機に退職したんですが、子育てをしている時に林から電話があったんです。「NPOを立ち上げたんだけど、手伝ってくれないか?」て。でも、そのときは子供が生まれたばかりだったので、ある程度落ち着いてから参加して。B4Sもできて、4年目ぐらいのタイミングかな。

 

━━ でも、退職したかつての部下に連絡するなんて、信頼されていたんですね。

あ、でも、会社時代は特に仲がよかった記憶はなくて……

━━ えっ。

もちろん、仲が悪かったわけではないです!(笑)でも、意外だったのは確かですね。

━━ 安心しました(笑) それでもやっぱり、頼れる相手だと思われたんでしょうね。菅原さんは、B4Sのなかではどんな役割なんですか?

林が理事長にあたるんですが、私は副理事長ですね。ただ、そうは言っても副理事だからどうこう、ということはないんですけどね。B4Sが行う全てのプログラムを管轄する運営チームがあって、そこのチーム長をしています。あとは、人材開発。つまりサポーターさんを募集して、研修し、マネージメントしていくチームのチーム長も担っています。

 

 

━━ プログラム自体と、それを支えるサポーターの育成。多くのボランティアが所属しているから、ひと仕事ですよね。サポーターの数は、約500人とお聞きしました。

最新の数字だと、496人ですね。

━━ それは、おそらくNPOの世界を見渡しても、かなり驚異的な人数だと思うのですが。

はい、多いと思います。どこでお話しても、驚かれますね。

 

━━ やっぱり、どうしてそんなにいるのか、というのがシンプルな疑問です。活動内容を見ていると、サポーターさんの立ち位置ってお手伝いではなくて、事業の根幹を担っていますよね。そういったところも関係しているのかな、と感じました。

それは、大きく関係しています。私たちが行なっているプログラムは、サポーターさんと子どもたちが、ある意味セットのようなものなんです。私たちの活動が拡大して、より多くの子どもたちと関われるようになると、必然、サポーターさんもそれだけ必要で。

 

━━ 活動が広がれば広がるほど、サポーターさん必要になってくる。ある意味、健全な人手不足がいつも起こっているわけですね。ボランティア募集の広告をたくさん打っているのかと思ったんですが、そうではないみたいですね。先にインタビューしたあくちゃんも、「教育 ボランティア」と自分で検索してB4Sを見つけた、と話していて。

サポーターの数が著しく足りなくなったときは、Facebook に広告を出したりもするんですが、通常は行なっていなくて。団体のサイトに載せた求人フォームから、毎月30人くらいが応募してくれるんです。

━━ 毎日ひとりの応募があるくらいの数ですね。すごい。それだけ、子どもたちの力になりたい、と思っている人が潜在的に多いということですね。

 

サポーターがサポーターを支える仕組み

 

 

━━ ちなみに、形としては、サポーターではなく従業員を雇って運営する、という方法もありますよね。

はい、ありますね。

━━ 現在のボランティアを主体とした形になっているのは、どうしてなんでしょうか。

B4Sは、名前が「Bridge for Smile」であるように、架け橋になりたい、という思いが設立の動機なんです。

━━ 架け橋。

はい。たとえば、児童養護施設の子どもたちに何かを提供するとしたら、どんなものを思い浮かべますか? ぬいぐるみだったり、ディズニーランドのチケットだったり、そうした子どもたちの喜びに直結したものを想像しやすいですよね。でも、実際に施設に行くと、そうしたものは潤沢に用意されていたりして。施設のニーズを探ってみると、これから施設を出なければいけない子どもたちの自立支援や、職員さんたち自身がスキルアップのための研修を求めていたりしたんです。

そこで、実際にはこういうことが児童養護施設には必要なんだ、といったメッセージを、NPOが架け橋となって社会に伝える。それが自分たちの役割だと思っているんです。世の中には、何か子どもたちの力になりたい、という思いを持った個人の方や企業がいます。そこをうまく仲介することで、子どもたちを支援したいんです。

 

━━ なるほど、支援を必要としているところと、支援したいという思いを持った人たちをしっかり繋げる、ということですね。

はい、そうなんです。私たちのスタンスとしては、福祉の専門家として子ども支援に関わるというよりも、「何か子どもたちの役に立ちたい」と感じている一般の人たちの思いを、子どもたちの自立に繋がるようにしていきたいんです。

 

 

━━ 続けて気になったのが、500人にも及ぶサポーターさんをどうマネジメントしているのか、という点です。いわゆる多くの会社で行われているマネジメントと、同じなのか、違うのか。

私たちの活動の特徴としては、サポーターさんが現場を直接支えているところです。なので、「ボランティアマネジメント」と言っても、事務局の仕事はサポーターさんが活動しやすい環境を整える、というのが第一なんです。部下をコントロールする、といった形のマネジメントとは意味合いが違いますね。

たとえば、「巣立ちプロジェクト」は子ども200人、大人200人、あわせると400人にもなるわけですから、事務局が「やるぞー!」と先導しようとしても、無理がありますよね。なので、チームをつくり、そのリーダーもサポーターさんが担って、様々な役割分担をしています。事務局は、会場の手配やお金の管理、子どもたちへの連絡といった補助的なものですね。

 

━━ 裏方に近いですね。

サポーターさんによるサポーター制度もあるんです。参加したばかりのサポーターさんに「あなたの動ける日だったら、こういう風に活動すると子どもたちと関わりやすいよ」なんてアドバイスしたり、悩み相談に乗ったりと、サポーターがサポーターをケアしている。

でも、「ボード制度」の影響はとても大きいかも知れません。

━━ ボード制度。

「ボランティアボード」とも呼んでいて、実行委員会のようなものです。サポーター全体を束ねる組織なんですが、そのメンバーはサポーターさんと事務局、半々になるように構成していて。それぞれの役割分担は違いますが、あくまでも立ち位置は一緒なんです。

サポーターを続けていて、現場での支援だけに注力したい人もいれば、プロジェクト自体を推進することに興味を持つ人もいます。そういう人は、このボード組織で運営部分にも協力してもらうんです。

 

事務局 vs ボランティア

 

 

━━ 事務局とサポーターさんの人数が半々、というのはあえてですか?

そうです。正直にお話すると、B4Sができて5年ぐらい経ったころかな、事務局 vs サポーター、といった時代があったんです(笑)

━━  わ、やっぱりそういう時代もあったんですね。

活動が続くほどに、サポーターさんの事務局への期待値も上がっていきます。事務局としても、「これをやりますから、サポーターさんは来てください」といった呼びかけになってしまっていて。それもあって、「事務局はお金をもらってるんだから、サポーターを束ねてちゃんとプロジェクトを推進してくれよ!」という批判が出るようになったんです。

 

━━ 上から物事を押し付けられる。それなのに、上にも落ち度がある。そういった構図だと、たしかに不満が溜まってしまいますね。

そうなんです。それを契機に、活動の最前線はサポーターさんに任せて、事務局は彼らが活動しやすい環境を整えるべきだ、という形を目指そうとなりました。逆に、サポーターさんに対しても、「そこまで思いを持ってやってくださっているのなら、事務局と一緒にプロジェクトを推進することも一緒にやっていきましょう」という風にスタンスを変えたんです。そうして生まれたのが、ボード組織です。

ボードに入ってるサポーターさんって、サポーターの気持ちも、事務局の気持ちも分かっているんです。どちらかにミスがあっても、「こういう事情があるんだから」と両者を丁寧に繋いでくれる。何か問題が起きたときも、事務局が動くより、ボードのメンバーが声をかけた方がスッと物事がまわったりするんです。

━━ それこそ、ボードが事務局とサポーターの橋渡しを担っているんですね。

 

 

━━ 何かトラブルがあった場合や、新しいプロジェクトを立てようとしたときの情報共有はどうされているんですか? 例えば、ボードから個々のメンバーに、といった感じで上から下へ流れていくんでしょうか。

いえ、事務局とサポーターさん全員が参加するB4S専用のSNSがあって、なにか情報共有があるときはそこで行うんです。新しいプロジェクトが始まったときも、そこで参加者を募集します。みんなの見える場所で物事が動く、ということを重要視しているんです。

━━ サポーターと事務局の境目を、あえてくっきり分けないような形なんですね。

そうですね、サポーターと事務局が一緒くたになってプロジェクトを進めていく、という意識は双方で強まってきている実感があります。サポーターさんの方でも、課題があったときに「言いたいことを言えばいい」という形ではなく、それを解決するのも自分の役割だ、とい空気感が浸透している気がします。

 

━━ 分かりやすい上の存在がいないと、自分たちがどうにかするしかないんですもんね。部署におけるマネージャーって、一方的に部下に指示を出せるイメージがあるけれど、その逆も多いですよね。僕も以前はある部署のマネージャーをしていたんですけど、「マネージャー、ここが整ってないよ!」「あ、ごめんなさい!」て、バタバタ動き回っていた感覚もあって。それが続くと、「あれ? そもそも同じチームの一員なのに……」てさびしい気持ちになってきて(笑)

対立構造って、まさにそういうものですよね(笑)

 

━━ ちなみに、サポーターさんの人数が増えることによって、マネジメントのスタイルって変わっていったんですか?

事務局 vs サポーター、といった構図が生まれたのが、だいたい人数が100人を過ぎたあたりだったんです。それまでは、代表が直接「B4Sはこういう方針で動いていて、みなさんとこういうところを大事にしながら活動していきたい」といったメッセージを、顔の見える形で直接共有できていたんですね。でも、100人を越えると、代表がひとりで語るのには限界がきて。

それもあって、ボランティアを希望する方への事前のオリエンテーションで、B4Sの主旨をしっかり伝えるようにしたんです。20〜30人に対しての、レクリエーション形式で。

━━ 人数を絞って、熱量が伝わるようにしたんですね。

はい。でも、それだって多いくらいで(笑) 一対一で話すのと、ひとりが大人数に話す形式では、どうしても聞き手側の受け取り方が違うんです。ですので、経験のあるサポーターさんだったり、事務局の人間も参加したりして、オリエンテーションではボランティア希望者2〜3人にたいしてひとりがついています。おたがいの顔が見える環境をつくらないと、関係性が薄くなってしまうんです。

 

 

自分のお金を使って、ボランティアをする

 

 

━━ サポーターと事務局がそれだけ肩を並べて活動していると、その上での事務局の仕事がなんなのか、というのが改めて気になります。サポーターさんの力が最大限活きるようにする、というお話でしたが、もうすこし具体的な部分も教えていただけますか?

そうですね…… B4Sに関わっているのは、子どもたちやサポーターさんだけではありません。施設の職員さん、寄付者、協賛・協力企業もいます。一部の地域からは行政委託を受けているので、行政の担当者もいます。そういった様々な関係者との調整に使う力が、とても大きいですね。資金集めも、大切な仕事のひとつですね。こうしたことに注力するのが、お給料をもらった上ではたらく事務局の意味だな、と思っています。

━━ ちなみに、事務局のスタッフ数は?

非常勤を合わせて30人です。

 

━━ 500人のサポーターさんと比べて、それだけの人数なんですね。サポーターさんが、なるべく100%の力で子どもたちと関われるようにするため、事務局は動いている。となると、事務局が直接子どもたちと関わる時間って、時間配分として10%にも満たないような……

はい、おっしゃる通りです(笑)ほかには、様々な課題を抱える子どもたち、たとえば生活保護を受けないと暮らせない子や、犯罪に巻き込まれた子たちへの個別支援も行っています。こういった対応が難しいプロジェクトについては、専門知識を持った事務局のスタッフが対応していたりもします。

 

━━ たしかに、サポーター活動って、子どもの助けになりたいという自分の気持ちが満たされる行為でもあるけれど、同時に、自分の行動が子どもたちに影響を与えてしまう、プレッシャーのかかる行為でもありますよね。

はい。自分が接したことで彼らを傷つける可能性もありますし、関わっていくうちに彼らから深い相談を受けて、どう答えればいいのかサポーター側が困ってしまう、ということもあります。ですので、そういった研修制度は充実したものになるようにしています。

 

 

━━ 先日インタビューしたサポーターのあくちゃんもばーばらも、研修制度やプログラムが確立されているから参加しやすい、と話していました。中には、サポーター側がお金を払う有償の研修もあると。

そうなんです。サポーターさんなのに、自分の活動のためにお金も払ってもらっている。不思議と言えば、不思議ですよね(笑) はじめは、「ボランティアにお金を払わせるとは、なんて団体だ!」と、辞めていかれる方もいました。

でも、反発を受けながらも、専門の講師を招いたり、内容をどんどん充実したものにしたりすることによって、サポーターさん自身の安全を守り、子どもたちが安心して大人と関われるようになると考えています。

━━ おたがいが不安なく関わりあうための、ほどよいハードルになってるんですね。

研修を受けないとプログラムに参加できないのは、事務局のスタッフも同じです。とはいえ、活動時間によって研修が無料になるポイント制度を設けたり、遠方から来られる方に一部の交通費は支給したり、なるべく負担は小さくなるようにしているんです。

 

 

“代表不在”から生まれた体制

 

 

━━ 長いインタビューとなってしまいましたが、たっぷりお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。先日のサポーターさんへのインタビューでは、事務局への課題感がたくさん出てくるのかな、なんて想像していたんですが、そんなことなくて。「彼らも大変そうで……」なんて声が多いのが、印象的でした。

あー、それは、ちょっと…… ウルウルしちゃいますね……笑

 

━━ そんな風におたがいが見えているというのは、やっぱり、「ボード制度」が大きいんですかね。

そう思います。ある時期、代表の林が海外に3年間行かなければいかなくて、こちらには不在の状態だったんです。遠隔でのコミュニケーションはありましたけどね。それまでは、情報の発信元は彼女が担っていました。

でも、サポーターの数が増えて、林からのメッセージが届きにくくなった。そんなときの長期不在となったので、代表がいなくてもまわる仕組みをつくらざるを得なくなったんです。

━━ そうして生まれたのが、「ボード制度」。

ええ。

━━ 結果オーライ、と言ってしまえば単純ですが、まさにピンチがチャンスとなったわけですね。引っ張る人がいなくなったからには、それに代わる仕組みをつくらなければいけない、と。

そうなんです。どうにかしないといけない状況になることで、どうにかする仕組みが生まれているような。とても当たり前で、泥くさい話になっちゃいましたが、これがB4Sのボランティアマネジメントなんです。

おかげさまで、「巣立ちプロジェクト」だけでなく、マンツーマンで子どもたちを支援したり、施設を退所した子どもたちへのサポートなど、様々なプログラムを手がけることができています。それらをまた、いろいろな背景を持ったサポーターが、それぞれの関わり方で支えている。

こうしたグラデーションのあるサポーターさんが多数集まっているのが、B4Sの大きな強みかも知れません。

━━ あぁ、本当にそうですね。改めて本日は、お忙しいなかありがとうございました!

 

500人のボランティアをまとめるマネジメント。ニックネーム、ボード制度、サポーターによるサポーターのケアといった、現場の主体をボランティアに委ねつつ、事務局がそこに溶け込むようなやわらかい仕組みが、それを実現していました。

 

 

関連ページのご紹介

 

親と暮らせない子どもたちを寄付で支援

 

こちらのページは、B4Sへの寄付方法をまとめたもの。

お金での寄付はもちろん、バリューブックスのチャリボン・パートナーでもありますので、ご家庭の不要になった本での寄付も可能です。

サポーターでなくても、こうした形で子どもたちの支援をすることができます。

よろしければぜひ、こちらものぞいてみてくださいね。

 

 

記事内の写真撮影:

北村渉
https://www.oserwk.com/

 

posted by 飯田 光平

株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。

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