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2019-09-12

Value Books Lab.のはじまりとジレンマ ー「バリューブックス代表・中村大樹氏1万字インタビュー」ー

みなさんこんにちは。

 

インターンの小村です。

 

今回は、前回の記事『捨てたくない本』の行方ーOFF本の後先ーの続編です。

 

前回の記事では、僕がバリューブックスにやってきて抱いた率直な疑問や悔しさをもとに、OFF本やラボのことについて書きました。

今回の記事は、それと対をなすような、僕の気持ちに客観性を持たせるような内容にしたいと考えました。

 

8月13日から8月15日の3日間、実際にラボのお店番をしてみて感じたのは、

 

・ラボには老若男女の垣根なく、多様なお客さんがやってくる

・「街にひらかれた古本屋」としてのラボの本棚に「ニッチな本」があることが、果たしてどれほど効果的なのか

 

という2つのことでした。

 

ただ、こうした気持ちは何に起因しているのか?そもそもラボはどのようにはじまり、どのような課題を抱え、解決に向けた努力をしているのか?

バリューブックスの代表・中村大樹氏に直接伺ってみました。

(以下は、代表がこの6月にはじめた茶葉や茶器を取り扱うお店「Chairo」で行ったインタビューです)

 

 

 

 

自分が課題に思ったこと、なんかおかしくないって思ったことを、「おかしくない」にしない

 

小村:ラボを始めた理由は……?

 

代表:ラボ単体でどう、ということはないけれど、BOOKGIFTってあるじゃん。要はうちの、インターネットで売れないからって捨てちゃう本を、どうにかしたいよねっていう。別に全部が捨てちゃいけないわけじゃないけど、まだ捨てない方がいいものはいっぱいあるし。それだけっちゃそれだけだね。モチベーションとしては。

 

小村:最初図書館だったんですよね。売る以外の活用というか。

 

 

代表:なんでもいいんだけどね。なんでもいいんだけど、本が活用されて。ネットで売れる売れないっていうのは最初の選択肢としてあるし。なんとかしたいしたいとは言ってるけど、本当にそれだけのことやってるのか、っていうところで、できることって何だろうって。図書館とかやってみたけどそんなに利用者は増えないし、値段下げて売ってみたらどうかなっていう実験の場だから。ラボだけじゃないけど、とにかく自分が課題に思ったこと、なんかおかしくないって思ったことを、「おかしくない」にしないっていうか。やってみる。やってみてダメだったら違う手段でやってみる。っていう。別にラボが完成形だとは思わないし、ラボもやってみてダメだなと思えばやめればいいし。モチベーションとしてはそこが一番かな。

逆に言うと、ストーリーというか、理由っていうのはそんなにシンプルじゃなくて。例えばラボをやりたいのは何でかって言ったら「捨てたくないから」。じゃあ捨てたくない本並べたらお客さん来るのかって言ったら、お客さんにとっては関係のない話で。そしたら、お客さんにとって魅力的な場所にするにはどうしよう、っていう。お客さんがそこで買ってくれる本って何なんだろう、とか。ラボで「本捨てたくないから買ってください」ばっかり言ってても、「そんなん知らんし」っていう話で。そういう、もちろんクリアしなきゃいけない課題もあるし、街の人に本を買いに来て欲しかったとか、あそこで本屋さんの仕入れをして欲しいとかっていうのと、本を捨てたくないのってどっちが先にあるんだろうって言われたら、分かんないっていうか、ぐちゃぐちゃだけど、本捨てたくないっていう方が大きい。大きいというか、最初のスタート。

 

ラボは「もったいないな」って思う人が来てくれた時に、見やすくしておく場所

 

小村:値付けは、ネットで値段が付いてないので安くしてるんですか。そんなに単純でもない?

 

代表:まあそういうことだね。基本的には、うちのまずベースのラインとしては、ネットで売れるんだったらネットで売れる値段で売ろうっていうのがビジネスモデル。かつうちの場合、抱えてる条件がいくつかあって。別に、個人の古本屋じゃやない。個人の古本屋で、自分が本に詳しくなって、自分の知ってるジャンルの本を取り扱えばいいってことではない。組織として動いていて、その人たちがある程度効率的に、自分の趣味趣向だけじゃなく動けるモデルにしないといけないっていう。だから、Amazonで売るっていうのはシステムを組んで誰でもできるようになってるわけで。

よく倉庫で、古本を捨ててるって言って、例えば古本屋の人が見たら「これもったいないじゃん」って言ったりとか、本好きな人が「これ欲しい」とか色々言うんだけど、それはあくまでも個人的な視点の一つだと。その人がたまたま好きなだけとか、その人がたまたま価値を知ってるだけで、それは別に再現性がないし、その人は全部を救えてるわけじゃなくて。ただたまたま、1万冊あった中の一冊自分が好きな本があったから「もったいない」って言ってるだけの状態。だけどうちはそれではダメっていうか。うちはたくさんの人で動いていて、すごく専門的な人ばっかりではないし。「もったいない」って言ってる100人の人が欲しい本がラボに並べられるとかBOOKGIFTで届けられるかっていうのは、課題が大きくて。そういう意味でも、ラボっていうのは「もったいないな」って思う人が来てくれた時に、見やすくしておく場所。多様な人がいるわけで。絵本が売りたいお店の人がいれば、アートブックを売りたいお店の人がいれば、マンガが好きな子供もいれば、いろんな人が「もったいない」って思う。だけど、毎日倉庫に皆んな来て、本を持ってくのかって言ったらそんなこと労力かかってやれないわけ。だから、そこをどう解決するか。

 

 

解決できてるかどうか分からないけど、そこに矛盾があるわけで。「もったいない」っていう人はいっぱいいるけど、「じゃあどうするか」っていうことには誰も答えを出してなくて。ラボはそういう取り組みの一個。だから、別にあれが完璧だとも思わないし。ただ、自分も嫌だと思うし、嫌だと思うんだったら、解決できるように頑張ってね、っていう。

 

小村:なるほど…。たまに行くくらいでは全然ダメってことですね(笑)

 

代表:(笑)。全然ダメっていうか、それはそれでいいんだけど。全然ダメってことはないけど、それはたまたま「年に一度ゴミ拾いして気持ちよかったです」ってことで。それはいいけど、ゴミがない社会を作ろうと思ったら「無理なく持続できて、誰かがすごく負担をしてるわけじゃなくて、持続可能な状態に持ってかなきゃいけない」んでしょ、っていう。一日頑張って気持ちよかったね、じゃあその抱えてる矛盾は解決できないんでしょ、っていうなかの取り組み。BOOKGIFTもそうだし。逆にいうと、それはこっちがただただ気持ちよくなるための押し付けであってもいけない。例えば人件費だって無駄にかかりすぎてたらいけないし。お客さんからしたら、そんなところに人件費かけるんだったら買取金額上げろよって話で。それもまた持続しないよね、っていう。残る課題っていうのは結構でかいんだよ、確かに。基本的に仕事って問題解決で、人が電気使いたいから電気屋さんがいたりとか。皆んな困ってる人に対して提供していて、お腹空いてる人がいるからご飯屋さんがあるんだよね。全部問題解決でビジネスって成り立つし、そこで「儲かる」、「お金払ってでもして欲しい」っていう風に成り立ってる。うちで言えばそれは、ネットで買い取ったものをAmazonで売るとかネットで売るっていうのは、うちも儲かるしお客さんも「家片付いてよかった」って、WinWinでいいじゃん、っていう。だけどそこで出てくる問題がある。「これどうすんの」っていう。それが結構面倒くさいっていうか、難しい。

 

小村:しかも実店舗でやる場合、誰が何を求めてるかっていうのが分かりにくいというか。

 

代表:本屋っていうのは、俺の概念としては、フラットであるべきとは言わないけど、フラットであることが好き。別に、セレクトした「うちはこれが好きなんだ」っていう本屋もいいけど、俺は比較的、何が好きだか分からないし、本のどちらが崇高だとかどちらの方が面白いとかはないけども、みんなが手に取りやすいようにしておくっていう。だけどそれが「フラットです」って言って、「うちの倉庫行ってみんな選んでください」って言うとそれは選べなくなっちゃう。だからある程度選別したりとかはするけども、その選別の仕方っていうのは別に「これがいいあれがいい」っていうよりは、選びやすく。良くないものっていうのは逆にあるから。古すぎるとか、これはテキトーに作った本、とか。そういうのは別に置かなくてもいいとは思うけど。どちらかというとそういう会社だしお店であって。セレクトショップで自分たちの世界観を出すんだ、っていうよりは。それは個人の人がやった方がいい。個人の人が、すごい強いその人の世界観をもとに作っていけばいいと思うけど。うちはどちらかというとプラットフォームっていうか。働く人も、そんなに専門性がなくても働けるようになってた方がいいし。買いに来る人も、別に本好きの人ばっかりが来る必要もないし。いろんな人が、いろんな方面で活躍する場をつくるっていう、まあそういうこと。

 

 

 

自分がつくりだした世界で、矛盾を起こしたくない

 

小村:僕も「これもったいなくない?」って言ってる側の人だったんですけど、求めてない人に「こんな本ありますよ」って言っても買ってはくれないだろうし。どういう活用がいいのかなって……。

 

代表:それはやらなくてもいいんだよ、別に(笑)。ただ、俺は矛盾が嫌なんだよ。例えば、「うちはBOOKGIFTで本捨てないようにしてます」って言ってるけど、ほとんどのものを捨てていて、そこにそんなに大した努力もしていない状態っていうのが、自分が嫌だ。なんか気持ち悪いっていう。美しくないっていうか。だけど、別に古紙のリサイクルが悪いとは思わないし。だから、「使えるものは全部使ってますよ」って言って、古紙のリサイクルにその後回るのはいいんじゃないですか、ってただ言いたいだけ。自分がつくりだした世界で、矛盾を起こしたくないっていうか。ただそれだけ。それはでも、どうしたらいいかっていう実験をしていかないと。

簡単に「こうしたらいい」で解決する問題は大体解決されてるわけで。だから、「もったいない」って気付く人がいて、簡単に解決できるんだったらいいけど。気付いてないわけじゃない。「気付いてるんだったら解決すればいいじゃん」で解決できる問題は解決してるんだけど、気付いて何かやっても解決できないからずっと残ってる問題がある。お金がかかりすぎちゃうとか、面倒くさいとか。

 

小村:そうですよね。例えば1時間800円の時給が発生した中で頑張って本を拾っても、それが利益になるかって言ったらそうでもないような気もするし。

 

代表:利益になる、ならないの問題、単純な利益計算でいうと、元々が捨ててるもので、原価ゼロ。売上-原価っていうのが普通だけど、原価はゼロ円。だから、売上=粗利。粗利って、売上-原価でしょ。じゃあ経費って何なのかっていうと、あそこの家賃とか、最初にかかった内装工事費とかもあるけど、それは一旦置いといたとしてフローの部分だけ見ると、拾って運んで並べて売っての人件費がペイされてるかどうかっていう。そしたら結構厳しそうじゃん。

 

小村:そうですね。あの値段で、ってなると……。

 

 

代表:あの値段で、ってなると厳しいのか、あの値段じゃなきゃラボにお客さんが来ないのか。それは分からないしやってみたらいいかもしれないけど。あそこで全部値段上げてやってみたら、同じ冊数売れて売り上げが倍になって、いいねってなるかもしれないし。単行本1冊50円で売ってるのが100円になった途端、ブックオフで売ってるよねっていう話で。それで、ブックオフの単行本100円コーナーのクオリティに勝てるかって言われたら、微妙だと思うよ。ブックオフで100円で売ってるコーナーには、うちでAmazonで売ってるやつも結構置いてあるし、Amazonで1円とか10円とか50円とかのものもある。だけどうちは、Amazonで0円になって、もちろん中には面白いやつとかAmazonにないやつとかもあるけど。ベースラインでいうとAmazonに大体あって。要は、Amazonで売っててブックオフでも売ってて。そしたら一旦安くするしかない。それで、目利きっていうのはできるかもしれない。中には「これは1000円で売れる」とか。だけど、そしたらさっきの問題で、目利きする人が必要だよね、とか。目利きする人はどのジャンルの目利きができて、全部のジャンルの目利きができるんですか、っていうと、そうではない。それだったら価格下げて、フラットに、安いっていうことによってたくさん来てもらって、たくさん買ってもらう方が売り上げが最大化する可能性があるよねっていう。

 

ラボの単行本の棚

 

だから、やってみないと分からない。全然それを否定するわけじゃなくて、いろいろやってる。古書組合に出してみよう、とかいろんなトライをしてる。今までもしてるし、これからもしてけばいいし。出たアイディアは。だけど、そういうことを繰り返さないと、少なくとも成り立たない。要は、単純じゃない。あれを持って来て、ただ捨てちゃうんだったらもったいないから、並べて売ったら利益出るね、じゃない。あそこの捨ててる中にはいらない本がほとんどなわけで。実際「もったいない」って見てる時には100冊のうちの1冊に目がいってるだけで、本当は90冊以上が「こんな本もう誰も買わないよな」っていうような本。でもそれ選別するのは結構大変。諸々結局、大変なわけ。大変じゃなかったらみんなやってるじゃん(笑)。「ただこれ並べたら儲かるよね」だったら、それはやるよ。

だけど儲からないのになんでやるのかっていうと、気持ち悪いからやるっていうだけで。でも、気持ち悪いことを気持ち悪いからって自分たちの赤字でもいいとかっていう負担でやると、それは持続しない。っていう時に、こういう風な選別をしていけば効率的に並べられるなあとか、こういうブランディングをしていったらお店にお客さんが来てくれるなあとか。内装をこういう風にしてみたらどうかなあとかっていう工夫をしていった時に、他だと一見儲からない本を、うちだとちゃんと利益が出るようになるかもしれないっていうのが、第一段。損益計算書の一層目。

これはBOOKGIFTもそうだけど、俺の中では、そのサイクルともう一個大きなサイクルを持っていて。最終的に何をしたいかって言うと、うちが本当に徹底的にオンラインで売れるものは売ってるし、オフラインで売れるものは売っているよっていう、オンラインでもオフラインでも、とにかく欲しい人がいるものは手に取れるような形にしていますよ、っていう風に言い切れるほどの差異を生み出せたら、お客さんはそこを使うんじゃないかっていう。自分の大切な本をどこで売りますかってなった時に、そういう他ができない努力をしているところで売るっていう。そうすると、さっきの売り買いの損益計算書とはまた違う、そもそもうちがもっと大きなサイクルとしてやっている、本の買取を集めるっていうところに寄与するようになってくる

そうすると、例えば新規のユーザーを4000円とか5000円の広告費をかけてでも呼んで来て、その人たちがうちのサイトに来た時に、BOOKGIFTやってますとか、ラボで徹底的に捨てないようにしてますとかっていうことを、実態とブランディング込みでできていったら、そこ使うようになると思ってる。

 

 

ラボの2階では、不定期で様々な企画展示が開催されている。これもブランディングのひとつか。

 

 

そこが一番本を大事にしてるなっていうところに持っていきたい。それが一番きれいじゃん。

そうすると、例えばラボで一ヶ月に20万円の赤字が出るとしても、お客さんが50人くればいい。ラボが毎月20万円の赤字を払ってることを広報したり、リピーターの人に伝えることによって、うちの買取のユーザーが50人増えれば、新規顧客獲得にかけた1人あたり4000円の広告費がペイできる。

それはまた違うサイクル。そうすると、「なんであそこ赤字なのにやってるの?」とか「儲からないのにやってるの?」とか「ボランティアでやってるの?」って言われても、うちはそうやって合わせられるよ、っていう。そこを徹底してやることによって、本業のユーザーが増える。そもそも本を送りたいというモチベーションにもなるから。そこが繋がってくると、一見20万円の赤字のようだけど、100人くれば倍の利益じゃん、とかそういうところを狙ってる。中途半端なものはそこにはならないから。徹底してやってると、そこが(繋がってくる)。極端力っていうのがあるんじゃないかなって。

 

小村:それを考えると、ラボの棚とかつくる時は、できるだけフラットで、いろんな人が入れるような。

 

代表:別にフラットであるというよりは、単純に売り上げの最大化を狙えばいい。極端な話をすると、ラボが「小説のアウトレット本屋」ですって言った方が人がいっぱいくるんだったら、まず小説が救える。そしたら小説以外のやつは残っちゃうから、それはどうする、ってまた考えればいいけど。とにかく、すべてのまだ使える本を使いましょうね、と。別にラボだけで解決するとも思ってないし。だけどフラットに置いた方が、より多くの人に来てもらえるんだったらそれでもいいし。それはなんて言うか、まだまだやれることがいっぱいある中の一手だから。

全体としては「うちはこれは売るけどこれは売らない」ではない。方向として。とか、「この本は救い出したけど、他の本は価値があっても僕らは知らないです」ってわけにもいかないから。まあ、分かんない、難しいよ(笑)。

 

最初からモチベーションは変わっていない

 

小村:難しいですね(笑)。

僕の場合は、古本屋でバイトしてて、っていうのがあってこっちに来て。それで僕の基準としては、バイト先の古本屋で売ってたものが結構捨てられてたのを見たので、それはもったいないんじゃないの、と思ったんですけど。だけどそれはみんなに「こういう本を拾いましょう」と言って拾えるわけではなく……という。それでラボに立ってみると、本を買いに来るのは結構子連れの人とかが多くて。僕が拾ってたアート本とかって、ラボの客層にはあんまり刺さってないような気もして。

 

 

代表:ただ、「客層に刺さってない」っていうのは、多分、ほとんどの人がそういう思考をするんだけど、その客層ってどうできたの?っていう。説教じゃないけど、あなたはじゃあ、自分が置いた本を買ってくれる人に来てもらう努力をしたの?っていう。たまたまそこに来る、今まで来ているお客さんに、そういう人がいないっていうだけで。

だけどなんでそんなに……俺はすごい、そういうフラストレーションがあるわけ。なんでそんなにみんな、現状を変えようとしないのか、っていう。だってそれは別に、自分が売りたい本があるんだったら、買ってもらえそうな人に来てもらう努力をしないで、「ここにはそれを欲しい人がいないから売れない」って。俺は全部をゼロから作ってるから。無いところから、来てもらわなきゃいけない、来てくれたらこうしなきゃいけない、新しい人に来てもらわなきゃいけない。ここ(Chairo)もそうだけど、ここにはお客さんがそんなに来ない。お店を始めたばっかりで信頼もないし、誰も知らないし、来ないっていう。それって、来ないんだったら売らない方がいいのか、みたいな話で。来ないんだったら来るようにしなきゃ、っていう。だってもともと来ないんだから。ラボだってもともと来ないから。もともと図書館やりますって言ったらあんまり来なかったわけ。じゃあどうしようって。じゃあ売ってみようか、とか。それに対して、その現状を変えようとするわけで。変えようとするのは、その人がいる意味がある。来なかったところを来るようにしたぜっていうのが、いい仕事したねっていう。なんかそういう思考だね。そもそもラボ自体もそうだけど。

 

「Chairo」の外装と店内。緑茶・青茶・紅茶といった幅広い茶葉を、季節ごとに異なるラインナップで販売。

 

みんな「いらない本を並べても売れません」って言って終わっちゃう。本がもったいないって言って拾って来て、並べて見たけど売れません、って。じゃあこれは無理なんだね、終わり、って。俺からすると「どんだけだよ」って思うからね(笑)。そんな簡単にうまくやったら、世の中面白くないだろって。クソゲーだろそれ、っていう(笑)。

 

それを繰り返してるだけ。仮定したものと現実にあらわれるものは違うし。「いい本だと思って並べたのに買ってくれる人がいない」ってなった時に、じゃあどうする、っていう。みんなそこでやめちゃう。「無理でした」って。っていうのが、俺が一番もどかしいところで。社会に対してっていうか、全てっていうか、そうじゃない人が起業したりいろんなチャレンジしてるんだと思うけど。それが「無理」が早すぎるっていう。で、俺はそれがしつこいだけっていう。

 

「本捨ててるのもったいないね」って言ってなんかやってみて、「でも売れなかった、無理でした、終わり」には絶対できない。だから色々やる。図書館をやってみよう、とか。ラボをやってみようとかBOOKGIFTやってみようとか。やってみたら「人件費がかかりすぎて大変です」ってなったら、「じゃあなんか考えなきゃな」とか。持続しないんだったら、持続するようにしないとな、っていう。ただ一個の課題をしつこくやってる。

 

「もったいない」って言われるのが悔しいし、自分も嫌だし。「もったいないね、本捨てちゃうんだ」って言われたらムカつくじゃん。自分のやってることだから。だけどそれは、ムカついてやってみたけどダメでも諦めないのは、負けず嫌いなんだよ。負けず嫌いっていうか、美しくないのが嫌。自分の描いた絵に、なんか訳の分からない赤い線が入ってたら気持ち悪いじゃん。だけど消しても消しても消せないよってなったら、「もういいや」って諦めるわけで。そういうことができない。それだけの話で、大した理由じゃない。最初からモチベーションは変わっていない、っていう。自分の事業の中で気持ち悪いものがあるんだったら、気持ち悪くないようにしたいね、っていう。俺のモチベーションはそこだけ。それは意外にいろんなクリエイティブをして、いろんなことを繋げて解決しないと。簡単に解決できない問題が残ってるから。まあ難しいとこなんだよ。わかった?本当にわかった?(笑)。難しいっていうか、なかなか。

 

小村:思い違いとまではいかないですけど、僕がやってたことは全体的なバリューの事業で見たときに、あんまり当たってないっていうか(笑)。そういうことをやってたのかな、とは思いました。

 

代表:それは分からないけど、自分がそう思うんだったらまたなんか考えてやればいいっていうか(笑)

 

小村:別の方法を……。

 

代表:とにかく、バリューどうこうじゃなくて、まずは自分の人生があって、自分の人生が意味あるものでありたい。自分の人生があることで、自分もハッピーだし他の人のハッピーも作ったなって思いたい。ただそれだけの話だよ。俺にとってはそれが、自分の会社をつくって、働いてる人がケンカして嫌な気持ちをしてるってなったら「どうにかしなきゃな」と思うけど。それが昔だったら仲裁に入って「こうやってやろうよ」ってやればよかったけど、もう目が行き届かないんだったら、じゃあ「会社の仕組みどうしなきゃいけないんだっけ」とか、「自分のいないところでもハッピーに働いてもらうにはどうするんだっけ」とか考えて組織を変えたりとか、色々するわけ。

 

バリューブックスは組織の拡大に伴い、「ティール(進化型)組織」をモデルに組織づくりに取り組んでいる。

 

それはただ単純に、自分が納得したいだけ。それと一緒。別にそれは強制したいわけじゃない。「うちの会社はこうだからこうしてください」じゃない。個人的に嫌なだけだから。ただそれを「一緒に手伝ってくれる人いませんか」とか「興味ある人いませんか」って言ったときに、やってくれる人がいれば「ありがとう」とは思うけど。

 

小村:今日のお話を聞いて、インターンに来たとかより以前の問題で、僕は好きな本が売りたいんだなと思いました。だから、僕個人の思いとしては、「みんなに開かれた本」を広く売っていきたいっていうよりは、ニッチでもいいから、ぐっと刺さるような本を売ると。そういうことしたいんだなあと思って。でもそれは自分のことなんで……。

 

代表:いいんだよ。別に、インターンで来てるわけで、自分のそれを探すために色々やってればいいわけで。別にうちが正しいわけじゃないし、うちの中だって多様な動きをしてるだろうし。だから、うちの中にそういう人がいちゃいけないってわけじゃない。そういう人がいれば、フラットにだけじゃできない、一個のゾーンが増えるし。っていうのは別にいいと思うけど、会社全体としては、「あなたの本は買い取れません」とか「あなたの本は売れません」とかっていう会社じゃやないよ、っていうのを目指したい。だから、ラボ自体がすごいフラットであるとか、学習参考書置いてあったりする必要もないと思うし。いろんな本がもっとあるわけで。だから拡張すればそれはいいし。こう拡張してこう拡張して……ってやった方が広くなるわけだから。だから、自分の人生に自分で課題を置かないと。やりたいことをやる、と。さっき言ってたのは、OFF本を売ることが俺のやりたいことじゃないんだけど。別にそれをやりたくて起業したわけじゃないけど。自分のやったことによって問題が起きてるんだったら、それは嫌だねっていうのが強いだけ。気持ち悪いよね、とか。っていうだけの、結構変なあれだよ(笑)。なかなか難しい、理解しがたい(笑)。

 

小村:解決したいんですよね……OFF本の問題。

 

代表:簡単な捉え方をした方がいいと思うよ。自分にできる課題かっていうか。要は、モチベーションとできる問題解決って対だから。問題解決が難しいことに対して、ちょっとしたモチベーションだと解決できないわけ。それで、自分のモチベーションが本当にあることをやらないと。客観的にじゃなくて。自分のモチベーションが一番大事だと思うよ。モチベーションの在処をちゃんと見つけないと。モチベーションて、いろんなモチベーションがあるから。「好き」とかもモチベーションだし、「ムカつく」とか。いろんなモチベーションがあるんだけど。エネルギーの量が大事だな。

 

小村:ありがとうございました。

 

代表:いい記事になりそうかな?(笑)

 

 

第1弾の記事と今回のインタビューを経て、次は自分が実際に「本を売る」ところまで行くことがベストかな、と感じています。

 

 

僕はこれにて上田を離れます。

本を通して、自分に何ができるか。引き続き金沢で考えていきます。

 

 

 

 

それでは、また!!!

posted by 小村宗大郎

夏休みを使って、バリューブックスで一ヶ月間働いています。
value books lab.の3階に住みながら、上田周辺で考え中。古本はたのしい。

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